
客単価×購入頻度のクロス集計|優良顧客を見つける2軸分析
「うちのお店、常連さんって増えているのかな」。売上の数字は毎日見ているのに、お客さまの“顔ぶれ”となると、急にぼんやりしてしまう——そんなもどかしさはありませんか。
一度にたくさん買ってくれる人。少額だけど何度も通ってくれる人。両方そろっている人。同じ「お客さま」でも、お店との付き合い方はぜんぶ違います。でも数字をまとめて眺めているだけだと、その違いは見えません。
そこで今日おすすめしたいのが、お客さまを「1回でいくら使うか」と「何回買ってくれるか」の2つの方向で並べてみること。むずかしい計算はいりません。表計算ソフトがあれば、今日から始められます。肩の力を抜いて読んでみてください。
結論:客単価(客単価=1回の注文で使われる金額)と購入頻度(購入頻度=ある期間に何回買ってくれたか)を、縦軸と横軸に組み合わせて数える「クロス集計(クロス集計=2つの切り口を縦・横に掛け合わせて人数や売上を数える方法)」をすると、お客さまが自然と4つのタイプに分かれます。やることは3ステップ。①ある期間の購入データをお客さま単位で集め、1人ずつ「平均の客単価」と「購入回数」を出す → ②客単価の高い/低い、頻度の多い/少ないで4つのマスに振り分ける → ③「高単価×高頻度=優良層」には感謝を、「高単価×低頻度」には再訪のきっかけを、「低単価×高頻度」にはまとめ買いの後押しを、と層ごとに手を変える。全員に同じ施策をやめるだけで、同じ労力でも手応えが変わります。
いま何が起きているか|「平均」で見ると、大切な人が埋もれる
売上を振り返るとき、多くのお店が見ているのは「全体の客単価」や「全体のリピート率」といった平均の数字です。平均はお店の調子をざっくりつかむには便利ですが、落とし穴があります。平均は、性格の違うお客さまを一つにまぜてしまうのです。
たとえば「平均客単価5,000円」と出ても、その中身は、
- 1回で2万円を気前よく使う、でも年に1回だけの人
- 毎月3,000円ずつ、こつこつ通ってくれる人
- 一度だけ3,000円で、そのまま離れてしまった人
がぜんぶ混ざった結果かもしれません。この3人は、お店にとっての意味がまるで違います。なのに平均で見ているかぎり、全員が「5,000円のお客さま」として同じ顔に見えてしまう。だから、大切にすべき人への一手が、その他大勢への一斉メールに埋もれてしまうのです。
ここで役に立つのが、1つの平均ではなく、2つの軸で散らばりを見るやり方です。「1回あたりいくら使うか(客単価)」を縦に、「何回買ってくれるか(購入頻度)」を横に取る。たったこれだけで、埋もれていたお客さまの違いが、くっきり浮かび上がります。
なお、顧客を分ける分析にはいくつか種類があります。購入金額の大きい順に10等分するデシル分析、直近・頻度・金額の3つで分けるRFM分析などです。今日の客単価×頻度のクロス集計は、その中でも軸が2つだけでいちばん直感的。「はじめの一歩」にぴったりの分析です。
具体例|4つのマスに分けて、打ち手を変える

身構えなくて大丈夫です。順番にやれば、その日のうちに全体像が見えます。
① お客さま1人ずつの「客単価」と「購入回数」を出す
まず、ある期間(たとえば直近1年)の購入データを、お客さま単位でそろえます。1人のお客さまについて、次の2つを出すのがゴールです。
- 購入回数:その期間に何回注文したか(=購入頻度)
- 平均客単価:その期間の合計購入金額 ÷ 購入回数(=1回あたりいくら使ったか)
購入データは、使っているカートシステムの管理画面や、GA4(ジーエーフォー=Googleの無料アクセス解析ツール)のeコマースのデータから書き出せます。書き出し方はGoogleのアナリティクス ヘルプ(公式)で確認できます。GA4で売上を見る基本はGA4でECの売上を見る最初の一歩にまとめました。
注意:ここで見るのは「注文単位」ではなく、必ず「お客さま単位」です。1人の買い物を全部ひとまとめにして考えます。
② 「単価の高い/低い」「頻度の多い/少ない」で4つのマスに振り分ける
次に、2本の線で区切ります。客単価に「高い/低い」の境目を、購入回数に「多い/少ない」の境目を引くだけです。境目は、全体の平均値か、ちょうど真ん中にくる値(中央値)を目安にすると決めやすいです。すると、お客さまが次の4つのマスに分かれます(下の割合は、分かりやすくするための例です)。
| タイプ | 客単価 | 購入頻度 | お店での意味 |
|---|---|---|---|
| 優良層(右上) | 高い | 多い | お店をいちばん支えてくれる常連。数は少なくても売上の柱 |
| 大口・でも疎遠(左上) | 高い | 少ない | 1回はたくさん使うが、間が空く。再訪でぐっと伸びる |
| 常連・でも小口(右下) | 低い | 多い | こまめに通ってくれる。あと一品で単価が上がる |
| お試し層(左下) | 低い | 少ない | 一度きり・様子見。新規や、これから育つ人が混在 |
この4分割を眺めると、「売上を支えているのは右上のごく一部」「右下にはあと一歩の人がたくさんいる」といった、お店の“地形”が一目で分かります。人数の多いマスと、売上を生むマスは、たいてい一致しません。この食い違いこそ、打ち手を変える根拠になります。
③ マスごとに打ち手を変える
ここからが本番です。4つのマスは、求めているものがそれぞれ違います。
- 優良層(右上=高単価×高頻度):まず届けるべきは、割引ではなく感謝と特別扱いです。新商品の先行案内、限定の取り置き、ていねいなお礼のひとこと。「大切にされている」と感じてもらう施策を。ここを値引きで消耗させないのがコツです。くわしくはVIP・優良顧客を育てるロイヤルティ設計へ。
- 大口・でも疎遠(左上=高単価×低頻度):再び思い出してもらうきっかけが効きます。前回の購入からしばらく経った頃に、関連商品の案内や「そろそろ買い替えどきかも」の一声を。1回の単価が高い人なので、もう1回で売上インパクトが大きい層です。
- 常連・でも小口(右下=低単価×高頻度):通ってくれる関係はできているので、単価をそっと上げる後押しを。まとめ買いの提案、セット販売、「あと◯円で送料無料」の案内など。客単価を上げる考え方は客単価(AOV)を分析して引き上げるが参考になります。
- お試し層(左下=低単価×低頻度):ここで無理をしないのが大事です。全員を追いかけると、割引原資も手間も際限なくかかります。コストの低いメルマガやLINEでゆるくつながり、2回目につながりそうな人を見極める。初回から2回目への橋渡しはF2転換入門でくわしく。
よくあるつまずきと、その直し方
・マスを分けて満足してしまう:クロス集計は“今”の断面図。→ 季節やキャンペーンの影響もあるので、同じ期間の取り方で定期的に見直す。
・お試し層を切り捨てと勘違いする:左下=不要ではない。→ 「力の掛け方を変える」だけ。これから右へ、上へ育つ人も混ざっている。
・マスの“間の人”を見落とす:きっかり4分割できない中間層も多い。→ まずは四隅のはっきりした人から手を打ち、慣れたら9マスに細かくしてもよい。
クロス集計は、お客さまに優劣をつけて選別するためのものではありません。限られた時間と予算を、いちばん効くところへ届けるための地図です。地図があれば、やさしさも正しい方向に注げます。
あなたへの影響
- 同じ労力で、売上の伸び方が変わります。右上の優良層への感謝施策は、割引に頼らず売上を支えてくれます。全員一律のクーポンをやめるだけで、利益を削らずに手応えが出ることも少なくありません。
- 「次に何をするか」で迷わなくなります。マスごとに打ち手が決まっているので、「このお客さまにはこれ」と根拠を持って動けます。なんとなくの一斉配信から卒業できます。
- お店が広告に頼りすぎない体質になります。すでに買ってくれた人を右へ・上へ動かすのは、新規を集めるより何倍も効率的です。1人のお客さまが長く買ってくれる金額(LTV=お客さまが生涯で使ってくれる合計金額)を伸ばす土台になります。時系列での伸びはコホート分析でLTV・リピートを読み解くと合わせて見ると、より立体的に分かります。
明日やること
- カートの管理画面かGA4から、直近1年ぶんの購入データをお客さま単位で書き出す(GA4でECの売上を見る最初の一歩も参照)。
- 1人ずつ、購入回数と平均客単価(合計金額÷回数)の2つを出す。
- 客単価と購入回数それぞれに「高い/低い」「多い/少ない」の境目(平均か中央値)を引き、4つのマスに振り分ける。
- まず右上の優良層の顔ぶれを実際に眺め、送る“お礼・特別案内”の一言を考える(値引きから入らない)。
- 右下(小口の常連)に向けて、単価をそっと上げる提案を1つだけ用意する。欲張らず、1施策から。
クロス集計 はじめの一歩チェックリスト
- 分析する期間(例:直近1年)を決めた
- 購入データを「注文単位」ではなく「お客さま単位」で集めた
- 1人ずつ「購入回数」を出した
- 1人ずつ「平均客単価(合計金額÷回数)」を出した
- 客単価と購入回数に、それぞれ「高い/低い」の境目を引いた
- お客さまを4つのマスに振り分けた
- 各マスの「人数」と「売上合計」を並べて見た
- 右上の優良層に、割引ではなく“感謝・特別扱い”の施策を考えた
- 右下の常連に、単価を上げる提案を1つ用意した
- 左下のお試し層は無理に追いかけず、低コストでつながる方針にした
- 次に見直す時期(例:3か月後・半年後)を決めた
数字は、お客さまを値踏みするためのものではありません。「どなたに、いちばん心を込めるか」を見失わないための道具です。今日、まずは直近1年のデータを2つの軸で並べて、右上のマスを眺めてみてください。そこに並ぶのは、あなたのお店をいちばん好きでいてくれる人たちです。その顔ぶれが見えたら、次の一手は、きっと自然に浮かんできます。

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あなたのお店のお客さまは、どのマスに多くいますか。扱っている商材と、おおよその購入データの持ち方を教えていただければ、無料診断で「まずどのマスに、どんな手を打つか」の優先順位を一緒に整理してお返しします。
参考(公式・一次情報)
- Google アナリティクス ヘルプ(公式) — GA4でのeコマースデータの確認・書き出し